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「サメの脳みそ」がキングメーカー?

  • Posted by: 小林亮一
  • 2007年9月27日 02:16
  • PJ opinion

【PJ 2007年09月27日】- かつて、「日本は天皇を中心に回っている神の国である」と時代錯誤のギャグを飛ばした総理大臣がいた。彼の在任中、日経平均は30%も下げた。2000年の衆議院議員選挙では「無党派層は寝ていてくれればいい」と発言し、ブレア英首相との首脳会談では「(自民党政調会長時代の訪朝時に)『行方不明者ということでいいから、北京やパリやバンコクにいたという方法もあるのではないか』」と北朝鮮側に提案したことがあった」と発言した。海洋実習船「えひめ丸」の沈没事故では、事故発生を認知してから1時間以上もゴルフを続けた。

 この他にも、インターネットで検索すれば多くの失言が簡単にヒットする。インターネット技術の略称ITを「イット」と読んでしまった伝説は愛嬌(あいきょう)としても、失言を繰り返す総理大臣は「サメの脳みそ」と揶揄(やゆ)されるまでに至った。退陣直前の世論調査では、支持率はわずか5.6%だった。これほど国民に嫌われた総理大臣も珍しい。

 最近、「森喜朗」の名前が、マスコミに登場することが多くなった。週刊誌では「キングメーカー」と書かれることもある。彼の退陣以降、小泉純一郎、安倍晋三、そして福田康夫と、彼の政策集団から総理大臣が出ているのは事実である。しかし、森氏をキングメーカーにまつりあげているのは、マスコミ自身ではないのか。

 安倍晋三・前総理大臣が辞意表明をした9月12日、森氏はフランスに外遊中だった。翌13日に帰国した森氏は、「有力なのは麻生さん。目の前に選挙があるのだから」とコメントした。にもかかわらず、党内で福田氏への支持が拡大し始めると、率先して福田氏に出馬の意思を確認し、根回しに動きだした。そこに見えるのは、機に敏なだけで、信念など持ち合わせない"でしゃばり"政治家の姿でしかない。なぜマスコミは、森氏の動向を頻繁に伝えようとするのだろうか。

 自民党総裁選直後の記者会見で、福田・新総裁に「派閥主導の選挙戦と言われていますが」と質問した記者がいた。麻生氏に投票した国会議員は130人余と言われている。総裁選直前にマスコミが伝えた予想を大きく上回る得票数だ。選挙前、「派閥主導」と批判をしていたマスコミだが、多くの自民党議員は「そんな時代ではない」と発言していた。麻生氏の得票数から考えても、派閥の締め付けが強かったとは考えにくい。

 結局、「派閥主導」というのは、マスコミが、各派閥のリーダーの発言をうのみにした結果生まれた幻想ではなかったのか。派閥政治を批判しながら、選挙情勢を派閥単位の足し算で分析するマスコミ。市民が求めている情報は、派閥というグループの動向ではなく、自分の選挙区から送り出した議員が、どのような信念に基づいて投票したか、なのだ。中選挙区制時代の派閥政治から脱却していないのはマスコミ自身である。

 森氏をキングメーカーとする論調も、派閥という古ぼけたフィルターによるものだろう。つまり、複数の派閥が一致結束して福田氏を応援するというストーリーを作り上げるには根回し役が必要で、その根回し役として抜擢(ばってき)されたのが森氏だ。国民には嫌われた森氏だが、失言を繰り返した「実績」は、マスコミには「思ったことを後先考えずに発言する素直さ」として歓迎されているのではないか。過大評価が過ぎると思う。

 マスコミの政治報道は、古ぼけてしまっている。登場人物を入れ替えただけの昔話を繰り返そうとしているように見える。情報を歪曲(わいきょく)した三文芝居を見せられるよりは、情報を垂れ流してもらった方がずっといい。【了】

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