- 2007年10月24日 06:27
- PJ opinion
【PJ 2007年10月24日】- 海上自衛隊の補給艦からアメリカ軍補給艦への給油量が国会で過少に報告された問題は、「単なる事務官の入力ミス」であり、「ミスに気づいた後も海上幕僚監部が防衛庁長官に報告しなかった」ということで収束する気配である。防衛省には"文民統制の徹底を図るための抜本的対策検討委員会"といういかめしい名前の委員会ができ、「文民統制が徹底されていれば、今回のような問題は起きなかった」と言わんばかりの対応だ。
これでいいのだろうか。
この問題の発端は、市民団体「ピースデポ」によるアメリカ軍給油艦「ペコス」の航海日誌調査である。ピースデポは、海上自衛隊補給艦「ときわ」からペコスへの給油が行われたこと、給油量が約80万ガロンであったこと、そして、その燃料がペコスからアメリカ軍空母キティホークへと給油されたこと、などを明らかにした。
福田康夫官房長官(当時)は、2003年の国会答弁で、給油量は約20万ガロンと国会で答弁し、これを根拠に「キティホークの燃料消費から考えて、イラク関係に使われることはありえない」とした。実際の給油量がその4倍だったのだから、テロ対策特別措置法の規定から外れて、アメリカ軍のイラク関連活動に使用されたことを否定する根拠は何もなくなってしまったことになる。
アメリカ軍艦の航海日誌から給油量に関する国会答弁の矛盾が明らかになり、その矛盾は事務官のミスが原因だという。「ときわ」からの給油量約20万ガロンが間違いだったとすれば、他の補給艦の給油量を確認するのは当たり前だ。だが、補給艦「とわだ」の航海日誌は、"誤って"裁断処理されてしまっていて、確かめる方法はないという。そんな都合のいい話が信じられるだろうか。
事務官の入力ミスは、「ときわ」からの給油先艦船を取り違えたためだという。ならば、キティホーク以外の艦船で、実際には20万ガロンの給油を受けながら、入力時のミスで80万ガロンの給油を受けたことになっている艦船があるはずだ。その艦船は実在するのか。「とわだ」の航海日誌が裁断処理されたとしても、幕僚監部には「とわだ」からの報告記録が残っているはずだ。航海日誌がなくなると、その自衛隊艦船の活動記録が不明になるなどということがあるはずがない。ウソを追及していけば、必ずどこかで破綻する。そして、ウソのほころびが見え始めれば、今回の虚偽答弁は、文民統制が不十分だったから起こったのではなく、文民が主導して虚偽答弁を行い、その尻拭いを幕僚監部に押し付けた構図が明らかになる、とわたしは思っている。
マスコミを含めて、この問題への批判は「海上幕僚監部が気づいたミスを防衛庁長官に報告しなかった」という問題に矮小化されつつある。文民統制というマスコミが飛びつきそうな文言が、論点をミスリードしているのだと思う。
百歩譲って、今回の給油量の誤った報告が単なるミスだとしても、そのミスを見抜けなかった「文民」の責任は重い。給油量80万ガロン(=約300万リットル)の燃料の価格は、少なくとも1億4000万円だ。国家予算から見れば少額でも、血税1億4000万円を費やした燃料の行方を誰もチェックしていないのか。国会には決算委員会があり、政府には会計検査院がある。給油に要した2003年度の支出をチェックした「文民」はいなかったのではないか。これでは「文民統制」など絵にかいた餅である。政府の説明だけでも「文民不在」という深刻な状況が露呈しているのに、「文民統制の徹底を図るための抜本的対策検討委員会」など意味がない。
文民統制の根幹は、文民が全ての責任を負うことにある。どんなに論点をぼやかしても、幕僚監部に責任を押し付けても、自衛隊補給艦から給油を受けたキティホークがイラクで活動した事実は消えない。この事実に対する結果責任は誰が取るのか。【了】
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