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「お受験」化する大学入試

  • Posted by: 小林亮一
  • 2008年1月22日 06:59
  • PJ opinion

【PJ 2008年01月22日】- 19、20日の両日、大学入試センター試験が行われた。自宅がセンター試験の会場近くにあるため、毎年センター試験期間中には、朝夕の渋滞に悩まされる。平時ならほんの数十秒で通り抜けられる300メートルほどの区間だが、今年度一日目の試験が終わった19日夕方には、通過に40分かかった。ここ数年、渋滞がひどくなっている。

 会場前の道路(双方向一車線ずつの二車線道路、両側に横断歩道あり)には、受験生を迎えに来た自家用車が多数停車していた。歩道に乗り上げて停(と)まっている車も、二重駐車も見られた。迎えに来ていたのは、受験生の保護者がほとんどだと思われるが、両親が揃(そろ)って迎えに来ているのも目についた。混雑する道路に停車しながら、受験生が問題冊子を取り出し、父親が参考書をめくりながら、答え合わせをしている家族もいた。

 わたしがその会場でセンター試験を受けたのは、1990年1月。それまで国公立大の志望者を対象としていた「大学共通一次試験」が、私立大学も利用できる「大学入試センター試験」になって最初の試験だった。一回目のセンター試験を取材に来たテレビの車が路上駐車していたのは覚えているが、自家用車で渋滞していた記憶はない。車で迎えに来てもらう学生は珍しく、友達と二人で「迎えに来てもらうようじゃダメだよな」と揶揄(やゆ)したことも覚えている。

 あれから19年。センター試験の試験監督を数回引き受けたことがあるが、受験生が変わったようには感じない。受験生が50音順に並ぶ試験室内では、試験前後に私語を交わす受験生もほとんど無く、黙々と参考書をめくっている。高校生の変質がさまざまに取り上げられる昨今だが、受験生の態度は意外なほど真摯(しんし)だ。問題冊子を配るときにもほとんどの学生が頭を下げる。試験中にトイレに立つ際にも、周りの受験生の邪魔にならないように気を遣っているのが伝わってくるし、鉛筆を落として音を立てると、周囲に申し訳なさそうにしている。そういう姿を見ると、すがすがしい思いがする。

 これほど周囲に気を遣っている受験生とは対照的に、保護者の傍若無人ぶりが際(きわ)だっている。数年前、試験開始直後に、「子供が忘れた弁当を届けたいから入れてくれ」と受験者入場口で騒いだ保護者がいた。携帯電話を持っていないから連絡が取れない、入るのがダメなら呼び出してくれ、と押し問答の末、あきらめて帰った。お守りを届けて欲しい、という保護者もいた。試験室まで送っていきたいという保護者もいた。

 入り口前の違法駐車を注意すると、「試験が終わるまで待っているから、会場内のスペースに置かせてくれないか」と言われたこともある。無理な要求をする「モンスターペアレント」がマスコミに取り上げられているが、モンスター化は小中学生の親に限ったことではなく、大学受験生の親にさえもモンスター化の兆候がある。

 「自己中心的」といってしまえばそれまでだが、問題は、自分の大切な子供を、教師がなぜ他の子供たちと同じように扱うのか、という利己的な考え方と、すべての親が自分と同じ要求をしたらどうなるか、という想像力の欠如だろう。公正さが社会的に要求されているセンター試験では、勝手な要求をはねつけるのは当たり前で、受験生もそれはよく分かっている。分かっていないのは一部の保護者だ。対等な条件で試験を受けることに、センター試験の意義がある。会場前に停めた車内で路上で答え合わせを始める親は、みんながそれをし始めたら、近隣住民にどんな迷惑がかかるかが想像できないのだろう。試験中、トイレに行く際にも気を遣う受験生を見習うべきではないのか。

 受験生が、人生を決める試験、と意気込んで勉強しているのはよく分かるし、一生懸命な子供を保護者が応援するのは当たり前だろう。だが、保護者が受験に集中してしまって、周りのことを何も考えられなくなっているのは異常だ。大切な受験だから迷惑をかけてもしょうがない、と考えるのは、あまりに情けない。

 少子化によって大学全入時代が到来しつつある。大学は「目指す」ものではなく、「選ぶ」ものへと変わった。望めば誰もが大学にいける時代では、大学入試の「お受験」化が進むのだろう。何をしなくても公立小中学校に入れる状況で国立・私立学校を選ぶのは、保護者の強い意志によるものだろうが、全入時代の大学選びでも、受験生自身の「やりたいこと」の他に、保護者が行って欲しいと思う大学、というのが大きなバイアスになるに違いない。子供は親の果たせなかった夢を実現するためにいるのではない、とわたしは信じるが、子供の将来にレールを敷きたがっている親もかなりいるのだろう。道路をふさいで子供を迎えに来ている自家用車の列を見ながら、進路を押しつけてしまった後ろめたさで迎えに来ているのではないか、と考えていた。【了】

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