- 2008年1月25日 08:16
- PJ opinion
【PJ 2008年01月25日】- (上からのつづき)
「疑似科学」健康商品
テレパシーとEPR相関を結びつけるような「疑似科学」が世の中に氾濫(はんらん)しているように思える。ツカサニュース新聞の代表である川又氏の記事を前回は取り上げたが、批判すべきは川又氏だけではない。「マイナスイオン」「酸素水」「活性水素水」「ゲルマニウムブレスレッド」など、科学的裏付けがない効果をうたい、消費者を科学用語(あるいは疑似科学用語)でけむに巻いて商品化されているものもあり、消費者に対して説明責任を果たしていない状態だ。
「酸素水」は、大手飲料メーカーも発売している。アサヒビールの関連会社「アサヒ飲料」は、通常の水の7.5倍の酸素を詰め込んだ、と宣伝している。普通の水に溶け込んでいる酸素は、常温で1リットルあたり9ミリグラム程度。7.5倍でも67.5ミリグラムでしかない。酸素は22.4リットルで16グラム。一度の呼吸で500ミリリットルの空気を吸えば、その中の酸素は100ミリリットル、そこから体内に取り込まれるのは20ミリリットル程度だろう。20ミリリットルの酸素は14.3ミリグラムだ。呼吸4~5回分の酸素を水に溶かして飲んでも、胃や腸などの消化器から酸素が吸収されるのかすら怪しい。国立健康・栄養研究所のホームページでも、効果に否定的な論文が紹介されている。アサヒ飲料のほかにも、サントリーなどの大手飲料メーカーが、効果の分からない酸素水を大々的に売っているのだから、売れれば何でもいいのか、とあきれてしまう。
「活性水素水」も身体にいい水だと宣伝されている。科学的根拠としては、九州大学大学院農学研究科の白畑実隆教授が1997年に発表した論文「Electrolyzed-Reduced Water Scavenges Active Oxygen Species and Protects DNA from Oxidative Damage(電界還元水は活性酸素種を取り除き、DNAを酸化損傷から保護する)」Biochemical and Biophysical Resarch Communications 234, 269-274(1997)が頻繁に取り上げられている。
論文を読めば分かるように、この論文は電界還元水がDNAの酸化損傷を抑制するという「実験結果」と、効果をもたらしているのは活性水素(単原子水素)であるという「推論」を含む。実験結果は、他の研究グループも再現しており、科学的な検証を受けた状態にあるが、水中で活性水素が安定に存在できることについては、これまでの電気化学の常識からは受け入れがたいし、実際に検証されたこともない。あくまで推論の「活性水素」を大々的に宣伝して商売につなげるのは、大きな問題だと思う。
「疑う」という科学的思考法
科学とは疑うことである。実験を行って、実験結果とその結果の解釈を論文に書く。論文を提出すれば、匿名の審査員が実験結果を検討し、その実験結果を基に解釈を検討する。ここでいう検討とは、疑うことと同じ意味だ。結果は本当か、解釈は正しいか、別の解釈ができないか、これまでの他の論文と矛盾しないか、矛盾するとすればどちらが間違っているのか。
そういう疑問を著者にぶつけ、疑問が払拭(ふっしょく)されなければ論文は拒絶される。審査員が納得したとしても、他の読者が納得するとは限らない。学会でも質問され、手紙ももらい、それらに誠実に答えることで科学は成立している。自分の研究の正しさを主張しながら、他の研究者の研究をとことんまで否定してみるのが科学者の態度だ。その否定的態度を乗り越えて、ようやく自分の研究が認められる。他人の研究を、無条件に受け入れることは科学者の態度ではない。
科学が、検証と議論の体系であることを、分かっていただきたいと思う。科学"風"の言葉にごまかされないで欲しい。その言葉の向こう側に検証も議論もないのなら、それは絶対に科学ではない。特に健康商品では、自分が納得できないのなら、受け入れてはいけない。ノーベル賞を取った大科学者が言ったとしても、自分が納得するまで、それは自分にとって科学ではない、と思っていただきたい。分からないから健康に良さそう、ではなく、分からないものが健康にいいはずがない、と考えることを出発点にすべきだと思う。【了】
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