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聖火リレーに見る中国の「愛国心」

  • Posted by: 小林亮一
  • 2008年5月 1日 04:09
  • PJ opinion

画像はPJニュースサイトをご覧下さい。

【PJ 2008年05月01日】- オリンピックの聖火リレーが世界の五大陸を回るようになったのは、前回(2004年)のアテネ大会からだ。ギリシャのオリンピアで採火された聖火は、オーストラリアのシドニーを起点に、初めてアフリカ大陸と南アメリカ大陸を通過し、近代オリンピック発祥の地、アテネを目指した。商業主義に毒された感のあるオリンピックだが、世界中が注目するスポーツの祭典であることは確かで、世界中を回る聖火リレーは、オリンピックの理念を象徴するイベントに見えた。この"五大陸"聖火リレーを、二回目にしてぶち壊したのが中国だ。

 1936年に開催されたベルリンオリンピックは、アドルフ・ヒトラー率いるナチスが、ドイツ民族の優秀性と自らの権力を誇示するプロパガンダの場として利用された。オリンピック招致活動中や大会期間中はユダヤ人への迫害を緩和するなど、政策を曲げてまで開催にこぎ着けたオリンピックだった。くしくも、聖火リレーが初めて開催されたのも、ベルリンオリンピックだった。

 それから72年後の北京オリンピックは、漢民族の優秀性と中国の近代化のプロパガンダの場として利用されている。ナチスは、ユダヤ人迫害を表面上だけ取り繕ってオリンピックを行った。中国は、チベット人虐殺を国内問題と強弁し、チベット人を猛烈に批判し続けている。民族問題を隠すにせよ、開き直って少数民族を批判するにせよ、民族浄化を行うような卑劣な国に優劣などあるはずもないが、中国の厚顔無恥は際だっている。

 中国は、オリンピックを国威発揚の場としてしか考えていない。長野には無数の中国国旗がはためいた。数千人の中国人が「自発的に」日本国内外から集結したという。ウソだろう。あれほどの数の、しかも大きさの揃った中国国旗をどうやって手に入れたのか。その一点だけを考えても、長野に集まった中国人の「自発」の程度は容易に想像できる。

 チベット国旗の粗末さは中国国旗と対照的だった。A4の紙に印刷したモノクロの国旗、小さな画像を拡大して大きな紙に印刷したジャギーだらけの国旗。見てくれは粗末でも、テレビの画面を通して心に響く国旗だった。マスコミでは、聖火リレーに「乱入」した「台湾人」が拘束されたニュースが取り上げられていた。拘束されたのはタシィ・ツゥリンさん。タシィさんは、中国からインドに命がけで亡命したチベット人のご子息だ。タシィさんを台湾人と報道することは、正しくない。警官隊に押さえつけられてなお「フリーチベット」と涙ながらに叫んだタシィさんは、威力業務妨害で逮捕・送検され、現在もなお拘留されている。これは著しく正義に反するのではないか。

 「愛国心」をどう定義するかは難しい問題だが、わたしにとっての「国」とは、この国に住む人々であり、この国の自然だ。タシィさんのようなチベット人の愛国心も、抑圧され虐殺されているチベット人をどうにかして救おうとしている点で、わたしはよく理解できる。しかし、聖火リレーに見られた中国人の愛国心は、自らの国家を他国にアピールすることだけに執着し、彼らが「同胞」と言い張るチベット人には向いていない。

 少なくとも、1989年6月4日の天安門事件では、中国政府ではなく、中国人一人一人に向けられた愛国心があったはずだ。その「愛国心」はいつ失われたのか。天安門事件で虐殺しつくされたわけではあるまい。中国人の多くは、世界各地での聖火リレーを巡る騒動が、中国の発展をひがむ勢力によるものだと思っているらしい。どうすれば、中国政府の非道に気付いてもらえるのだろうか。

 聖火は、中国に入った。中国各地での聖火リレーは、中国があまねく発展していることを世界に知らしめるためだけに使われるだろう。空虚な聖火リレーだ。ヒトラーが始めた聖火リレーは、北京オリンピックで「本来の」聖火リレーとなっただけかもしれない。聖火が、チベット人の怒りで燃えていることを、中国人は知らない。知ろうともしていない。【了】

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