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国際緊急救助隊の「無念」を繰り返さないために=中国・四川大地震

  • Posted by: 小林亮一
  • 2008年5月23日 14:08
  • PJ opinion

【PJ 2008年05月23日】- 日本は、世界の中で最も自然災害の多い国だろう。台風の通り道に位置し、地下では4つの大陸プレートがせめぎ合い、無数の活断層があり、火山があり、細長い国土の中央の山脈から流れる急こう配の河川は頻繁に氾濫(はんらん)し、多くの人々が住む海岸付近のわずかな平野は津波や高潮の被害も受ける。日本に世界最高レベルの災害救助組織があるのは、幾多の災害に苦しみ、多数の犠牲者を出してきたからにほかならない。

 阪神・淡路大震災を例に引くまでもなく、日本に住む多くの人たちは地震被害の深刻さを身をもって知っている。また、被災地で、救助隊が危険を顧みず活動し、多くの人命を救助してきたことも知っている。だから、四川大地震の被災地に、日本政府が国際救助隊を派遣することを決めたとき、派遣先が少数民族を迫害している国であっても、救助隊に心からエールを送り、一人でも多くの命を救ってくれることを願った。

 21日に帰国した救助チームは、残念ながら、生存者の救出はできなかったが、ご遺体に整列して黙禱(もくとう)する救助隊の写真に感銘を受けた人々の声が伝えられている。世界に誇るべき救助隊である。20日に出発した医療チームも、立派な活動をしてくれるだろう。無事の帰国を心から祈っている。

 帰国した救助チームの藤谷浩志副隊長は「中国での救援活動に参加した以上最後まで仕事をやり遂げたかった」と語っている。生存者を救出できなかった無念さを口にする隊員もいた。だが、その無念さは、救助チームの責任ではない。派遣された救助チームは、「都市型災害救助」のスペシャリストだった。倒壊したビルの中に閉じこめられた生存者の救出に抜群の能力を発揮する。しかし、中国側が最初に案内したのは、山間部の土砂崩れ現場だった。中国政府の救助隊の受け入れ要請が遅れ、交通が寸断されている山間部との往復に時間を取られたため、実際に救助活動を始めたときには、生存率が大幅に低下すると言われている発災後72時間を大幅に過ぎていた。

 20日に派遣された医療チームは、簡易エックス線検査装置や応急外科手術設備を持ち、医療設備のない被災地域での活動を専門とするチームだ。しかし、現場に到着した彼らは、最前線での活動ではなく、成都市内の四川大学華西病院での活動を求められ、丸一日かけた協議の後、医療チームは中国政府の要請を受け入れる形で22日から活動を開始した。

 発災直後、中国からの報道は、倒壊したビルや、治療を受けられない負傷者の映像ばかりだった。このため、「都市型災害」の救助チームと、「野戦病院」型の医療チームを派遣した政府の判断は妥当だったと思う。問題は、都市型災害チームを山間部に派遣し、野戦病院型医療チームを総合病院に配置した不手際だろう。

 四川大地震の被災地での救助活動は、人民解放軍が指揮を執っている。一方、国際緊急救助隊の受け入れを決めたのは、中国外交部を中心とする中国政府だ。つまり、中国政府が受け入れを決めたものの、人民解放軍との意思疎通が図れていなかったことが、今回の中国政府の「不手際」の原因ではないのか。実際、産経新聞では、「あれは日本隊だろ。早く帰れよっていう感じだ」という兵士の発言が伝えられている。軍隊という組織は、どの国でも、自己完結型の組織だ。その組織の活動の中に、外国の救助隊を組み込もうとすれば、齟齬(そご)をきたすのは当然だ。自衛隊でも、それは無理だろうと思う。だからこそ、受け入れを決めた中国政府は、人民解放軍と救助隊の活動地域を調整する必要があった。今回、中国政府はその調整ができなかった。

 救助チームの都市部での活動場所は、人民解放軍が一通りの救出活動を終えた場所だった。医療チームの活動場所は、人民解放軍の「邪魔」にならない総合病院の中だ。人民解放軍が救助隊を「もてあましている」様子が垣間(かいま)見える。もっと適切な活動場所があれば、救助隊の救助活動も違ったものになったのかも知れないと思うと、残念でならない。もちろん、どんな場所に配置されても、救助隊が精一杯の活動をしてくれることに不安はないが。

 人民解放軍ではダメだ、と言っているのではない。人民解放軍も命がけで救出活動をしているのだから、救助隊が同じ場所で活動をしても、同じ結果になったのだろう。だが、一度受け入れを決めたのなら、救助隊が存分に活動できる環境を作ることが必要だったのではないか。帰国した隊員が無念さを口にするようなことは、避けられたのではないか。

 今回の救助隊派遣の教訓は、救助隊に存分に働いてもらうためには、派遣時に詳細な活動計画のすりあわせが必要だということだ。派遣するだけではなく、派遣した救助隊がどんな活動を得意としているのかを伝えることが必要だ。現地の救助本部と中央政府の調整も不可欠だろう。近い将来、必ず日本でも大規模災害が起こる。国際救助隊を受け入れる状況もあるだろう。せっかく来てもらったのに、思うように活動ができなかった無念さを抱いて撤収させるようなことは、ないほうがいい。

 地震で亡くなった皆さんの冥福を祈る。けがに苦しんでいる皆さんや、家族・知人を亡くした悲しみに暮れている皆さん、家を失って不自由な生活を送っている皆さんに、一日も早く平穏な日々が訪れることを願っている。【了】

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